第一中央法律事務所

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労務事件

過去にあったご相談

企業向けのご相談を受けていると、避けて通れないのが、従業員とのトラブルです。
顧問先から、税理士事務所から、ルートは様々ですが、労働問題に関する相談は途切れません。

労働基準法を守っていないブラック企業のことではありません。
社会にささやかでも貢献しようと、汗をかいて、誠実に経営をしている会社において、ある日、突然に、労働者から刃がつきつけられるのです。

その内容の大半は、労働者の地位に関わるものです。
解雇された。
退職を強要された。
不当な配置転換だ。
ハラスメントを受けた、など。
そして、刃をつきつけてくる社員、元社員は、時に、経営者や人事担当者の心の健康を破壊するほどのモンスターぶりをみせるのです。

労働事件における使用者の立場

労務事件においては、雇い主側は、最初からハンディを負っています。

第1に、法律が労働者を極めて手厚く保護しています。
労働契約法をみれば、雇い主の側の権利が厳しく制限されています。

 

労働契約法
(懲戒)
15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において(中略)、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

第2に、労働基準監督署が、基本的に「労働者保護」の立場で、労働者の主張を後押しします。

第3に、労働者の場合は、労働組合が、労働者保護のために幅広い活動をしています。職場に労働組合がなくても、誰でも加入できる「合同労働組合」、いわゆる“ユニオン”が活発に活動しています。
労働組合からの「団体交渉」の申入れがあった場合には、雇い主は拒否することができません。拒否すれば、不当労働行為として処分の対象になってしまいます。

交渉が始まる前から、こうしたアウェイな立場に置かれているのが、会社の労働問題です。このハンディを埋めるには、争議に経験のある弁護士に、早期に依頼して、適切な対応をはかるしかありません。

対応を誤ったがために、労働者の解雇が無効とされ、しかし、経営側の事情としては、どうしても会社には戻せず、労働者が定年まで勤めた場合の賃金(生涯の収入)の支払いを余儀なくされたというケースすらあるのです。

それは極端な例だとしても、やめさせたい従業員の年収分に相当する額を支払わなければならないケースはざらにあります。

そうした悪しき前例は、真面目に働く従業員のやる気を奪ってしまいます。
また、悪しき(ある種の従業員にとっては「おいしい」)前例として、労働争議を次々に引き起こすきっかけにもなってしまいます。

勝敗を分けるポイント

雇い主が労働者に対して行った処分が
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効」とされます。
従って、勝敗をわけるポイントは、処分が
「客観的に合理的な理由があり」
「社会通念上相当である」ことを、早期に示すことです。

「客観的に合理的な理由がある」というのは抽象的ですが、労働者に落ち度があった、というだけでは足りません。
落ち度があったのちに取るべき、しかるべきプロセスがあります。

・能力が足りないことを人格攻撃にならないように冷静に指摘する。
・本人と話し合って、期限を切って改善目標を設定する。
・本人の自助努力だけに任せず、改善のためのトレーニングを施す。
・定期的に達成度を確認。
・目標達成できなければ、上記を何度か繰り返す。
・それでも達成できなかった。

そうした場合に「社会通念上相当」であれば、降格、配置転換、解雇などの処分が許されることになります。

「社会通念上相当である」というのは、ひらたく言ってしまえば
「これだけひどいのでは、どこの会社でもそのくらいの処分はするだろう。」ということが必要であるということです。その会社の経営者の性格や経営方針だけで、ことを進めてはならない、ということです。

また、以上のプロセスを経ていることが、第三者(労基署や裁判所)によって、検証可能なかたちで記録されていることが必要です。

こう書いてくると、労働争議が起きる前から準備して進めてくるべきことであって、起きてしまってからでは遅い、と感じられるかもしれません。

本音をいえば、そのとおりです。「これは、ひどいな」と思えるケースで、記録が不十分であったがために、譲歩せざるをえないケースも多多あります。

しかし、これまでの予防対策が不十分であったからといって、起きてしまったことから目を背けることはできません。
書面による記録がなくとも、役員、人事担当者、一般従業員の証言であっても証拠になります。但し、裁判などの法的手続きが始まってから作られた書類は、信用性が低いものとされます。

直面するトラブルが、できる限り小さいうちに、経験のある弁護士に相談して、適切な対応策を練ることが重要です。社会保険労務士は、制度として争議に携わることはできませんし、また、紛争解決のトレーニングも受けていません。争議になったら、相談相手は、社会保険労務士ではなく、弁護士です。

なお、蛇足ですが、目先のトラブルが終わると、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、会社の規程、制度をそのままにされてしまうケースが、多いことを残念に思っています。日々の業務が多忙であることや、いやな過去を思い出したくないのは理解できますが、トラブルが終息した後にも、再発に向けて、あるべく人事・労務制度へ改善していくための、きっかけにしたいものです。

労務に関する事例

(守秘義務に抵触しないよう事案を変えてご紹介します)

1.ある外資系企業の営業マンの退職勧奨

ある外資系の精密機械販売の会社のケースです。
営業目標を達成するために、経験ある営業担当者Xをスカウトしました。条件は、年俸1000万円に実績に応じたインセンティブ。
契約期間は定めず。
地方のある地域を担当し、本社への出社は月に数度でよく、与えられた営業予算の中で、いかなる営業の仕方をしてもよい。
Xの経験、職務経歴書から判断した実績などから、会社は、大きな期待を抱いて、Xを雇いました。

しかし。
1年経過しても、新規顧客の獲得はゼロ。
月例の上司とのミーティングでは、上長や同僚の経験を踏まえての指導がなされましたが、成果はあがりません。
そのうちに、Xは週次、月次の定期レポートすら怠るようになってきました。
本社では、Xが本当に見込客のところを回っているのかすら、信じられなくなってきました。

9か月経過したところで、営業部長と長時間のミーティングを行い、最後の3か月の目標設定をし、達成できなければ、自主的に退社する、という言質を取りました。

しかし、Xの成績は結局上がらず、目標達成はかないませんでした。
人事担当者は、Xのことを考えて、解雇ではなく、退職勧奨という方法をとりました。会社がクビにするのではなく、本人が合意して退職するという形です。
本人は「わかりました。」と退席し、Xは翌日から有給休暇を取得するとして、出社しなくなりました。

ところが。
その翌々日に、労働法専門と称するX代理人弁護士から、内容証明郵便が届いたのです。
「違法な退職勧奨である。退職する意思はない。引き続き給与を支払え。
さもなくば最低1年分の年俸と解決までの給料を支払え。」

という内容でした。

この段階で、人事担当者が私どもの事務所を訪れました。

このケースでは、会社側の対応にいくつも問題点がありました。
まず、入社の際の雇傭契約の内容です。
第1に、雇用期間を定めていません。期限を区切るべきでした。
第2に、数値目標を設定しておくべきでした。達成できない場合には、契約が更新されないことを明確に定めておくべきでした。
第3に、記録が不十分でした。会社の側の問題についていえば、毎月の上長の指導は面談で行われており、口頭でのやりとりで、指示内容、本人も関与して定めた数値目標などが記録されて、いません。Xの側についていえば、不良な行為についての記録が不十分でした。見込客を回っていないことにについて、証拠がありません。指示されたレポートの内容が不備である点についても、その都度、指摘し、改善を求めていません。
第4に、9か月めの上長との面談で、目標値を定めて達成できなければ辞める、という発言があったのに、本人との間で文書作成が交わされていません。
最後に、人事担当者との面談時に、自主退職に応ずる、という発言があったのに、文書になっていません。

以上のような積み重ねが、先方の弁護士を強気にさせる材料になっています。

しかし、過去を悔いていても仕方がありません。

まず、弁護士との交渉では、強気の交渉を行いました。
退職合意ができていないというならば、会社はXを解雇する。
Xのように高額の年俸を取っている営業職の社員は、一般の事務職とちがって、例えれば「個人事業主」のような立場であって、労働法上の規程が杓子定規に適用されるべきではない。1件の新規顧客も取れなかったことは、解雇の必要性と合理性を十分に満たしているとの主張です。

しかし、交渉は短期間で決裂。
先方は、労働審判を申し立ててきました。

労働審判は、労使紛争を短期間で解決するために作られた裁判に似た制度で、短期間に、紛争解決を図ろうとするものです。
審判は、3回しは開かれません。
第1回に基本的な言い分と資料はすべて出す必要があります。
呼出を受けたら、短期間にあらゆる資料を集め、審判員たちにわかるように整えなければなりません。

私たちは、この案件に総力を投じて準備をしました。
会社に残ったメモ、メール、報告書などの断片的な資料を整理し、関係者の「陳述書」などで補充し、Xがとは退職合意が成立していること、仮にそうでないとしても、解雇には「客観的に合理的な理由があり」「社会通念上相当」であるとの主張を展開しました。

私は、いまでも会社の主張は正しかったと信じていますが、Xのような労働者にも、法の保護は手厚く、和解交渉は難航しました。

最終的には、以下の内容で和解しました。
・合意退職を確認。
・審判において合意退職を確認するまでの給与相当額約160 万円あまりは支払う。
・解決金として年俸の半額を支払う。
・双方、秘密は保持する。
・以後、双方はお互いに何の請求もしない。

皆さんは、この内容について、どうお考えになるでしょうか。
相手を100%押しつぶすことを「勝った」というのなら、勝ったとはいえないでしょう。
しかし、相手を金銭面では、相手を半分まで譲歩させることができました。
もし、裁判所が「Xの解雇は無効」と判断したなら、Xにずっと給与を支払い続けなければならない、という最悪の事態となります。それを避けることができた、また、秘密保持条項で、他の社員への波及を防げたという意味では、少なくとも「完敗」ではありません。

会社にとっては、苦い結末ですが、これも、我が国における「労働者保護」の一側面です。会社が、おなじ過ちを繰り返さないための制度作りと運用を構築して行かれることを願います。

 

2.ある食品問屋に、街宣車が乗り付けられそうになった件

老舗の食品問屋が、原料価格の高騰から経営難に陥りました。
やむを得ず、Yを整理解雇することにしました。
整理解雇においても、雇い主の権利は厳しく制限されています。

整理解雇が有効とされるためには、4つの条件が必要とされます。
(1) 人員整理の必要性
どうしても人員を整理しなければならない経営上の理由があること。
(2) 解雇回避努力義務を尽くすこと
希望退職者の募集、役員報酬のカット、出向、配置転換、一時帰休の実施など、解雇を回避するためにあらゆる努力を尽くしたこと。
(3) 被解雇者選定の合理性
人選が評価者の好き嫌いによらず、合理的かつ公平であること。
(4) 解雇手続の妥当性
解雇の対象者と十分に協議し、納得を得るための努力を尽くしていること。

会社は、それまでにも整理解雇を行っており、残る社員の中では、Y以外には対象がありません。顧問の社労士の意見では、整理解雇の要件は十分に満たしているとのことでした。

社長と専務は、Yに頭を下げて、事情を説明し、会社倒産を避けるために自主的に辞めてくれないかを告げました。
Yは、これを受け入れ、数日後から有給消化に入ることとし「長い間、お世話になりました。」といって、私物をすべて持ち帰りました。

これで、円満にことは落着し、社長と専務は経営再建に専念できるかのように見えました。
ところが、ことはそう甘くは運びませんでした。

数日後、ある労働組合(ユニオン)から、団体交渉の申入れがあったのです。

いわく、
・Yの解雇は無効である。
・過去の残業代の未払いが400万円以上あるから、即時に支払え。
・交渉を拒否すれば、不当労働行為として当局に告発する。
というものでした。

社長と専務は、途方にくれ、社労士に同席してもらって、団体交渉をしました。

団体交渉の席には、組合の執行委員長ほか1名、そしてYがおりました。

執行委員長は、威丈高に上から目線で、いいつのります。Yは、会社での様子とはうって変わって、大きな態度で横にふんぞり返っています。

・退職はまだしていない
・未払い残業代は直ちに支払え
・Yの言い分は正当なので、裁判にかけても弁護士費用がかかるだけ無駄だ。

社長と専務は途方にくれ、不安におびえ、その場で社労士とも相談のうえ、資金繰りを考えて、

「50万円ならどうにかする、それで許してもらえないか」と懇願しました。

執行委員長は、鼻で笑って

「話にならない。2週間後に、団体交渉を要求する。
それまでに、要求を呑まないなら、会社の前、駅の前などで抗議行動を行う。
宣伝カーやビラ配りなど、あらゆる行動を取る。
それが嫌なら、次の団体交渉までに決断してくるように。
自分たちは、会社が出荷した製品に産地が偽装されたものがあることまで、つかんでいるのだ。」

などと述べ立てて、長時間にわたる第1回の団体交渉は終わりました。

疲れ果てた社長と専務は、社労士の紹介である弁護士に相談しました。

その弁護士は、当初、強気で交渉してよいのではないか、といっていたのですが、街宣車や「産地偽装」の話を聞くと、急に意見を変え、 組合の要求に応ずることもやむを得ないのではないか、と言い出しました。

社長と専務は途方に暮れました。社長と専務は途方に暮れました。
Yを雇い続け、400万円以上の支払いをするなど、資金繰り上、絶対に不可能でした。
もはや倒産もやむなしと思い、顧問の税理士事務所に相談に行きました。
そこで、顧問税理士から、私どもの事務所のセカンド・オピニオンを取ってはどうか、と勧められ、当事務所を訪れることとなったのです。

専務は大変、几帳面な方で、案件に必要な資料をしっかりファイリングして、必要なコピーも準備して来所されましたので、打合せは効率的に進みました。私たちの分析はこうでした。

・整理解雇の要件は満たしている。
 裁判でも十分に戦える。
・未払い残業代については、会社の記録とYの記録の信用性が問題。
 Yの主張の根拠は、在職中に記録していた出退勤のメモを記載した手帳。その記載に基づくと、会社が支給した残業代では足りない。

訪問営業・外の催事などでの販売も多く、タイムカードで厳密に出退勤を管理できていなかったのは事実です。

しかし、他方で、会社は独自の記録にもとづいて残業代を算出し、支給前には従業員に確認させて、間違いがあれば申し出るようにさせていたことが判明しました。
そして、Yが在職中に、残業代の額に異議を述べたことはありませんでした。
これで、残業代についても、Yの主張は強いものではないと判断できました。

産地偽装の点については、かつて、注文数量分だけの在庫がなく、100箱のうち2〜3箱に、箱の表示とは異なる産地の製品を入れたことがある、それは事実だとのことでした。

整理解雇と未払い残業代について会社の主張が正当でも、それらのことは一般の方々や取引先にはわからない。そうしたことや、産地偽装の点を、街頭で、あるいは会社の前で、拡声器でまくしたてられて取引先から切られてしまいかねない、それは困る、と社長と専務はたいそうお悩みでした。

しかし、私たちの考えは違いました。

産地偽装の点と街宣活動を前面に押し出す先方の戦術は、おびえている社長と専務の心理につけ込んだものです。

しかし、ユニオンの執行委員長のやり方は勇み足です。

労働組合が、団体交渉を申し入れることができるのは、あくまで組合員との「労働問題」についてです。産地偽装の話は、Yの社員としての身分にも残業代支払いにも、何の関係もありません。

従って、それは、団体交渉の議題になることではありません。

そうしたことを告げて金銭を要求することは、恐喝です。

こうした考えから、私たちは、本件については、弁護士を代理人として、書面でしっかりとした反論をして、一歩も引かない姿勢で交渉すべきとアドバイスしました。

私どもは、正式なご依頼を受け、その日の午後のうちに、FAXでユニオンに以下の申入れをしました。

・退職合意は有効である。給与は支払わない。
・残業代についても支払いの義務はない。会社の記録の信用を争うなら、水掛け論になる団体交渉ではなく、法廷での決着を望む。
・産地偽装と街宣活動の点は、団体交渉のテーマたり得ない。
 これを材料に金銭的要求をするならば、直ちに恐喝罪で刑事告訴をする。

その後、団体交渉を不当に拒否した、といわれないように、2度の場は設けました。 

不安にかられている、社長と専務には、本業に専念していただき、団体交渉は、弁護士2名だけで行い、一歩も退かない姿勢で戦いました。

先方からは、産地偽装のことや、街宣活動に関する主張は、一切でなくなりました。

2回の団体交渉を経て、これ以上の交渉は意味がないとして、交渉自体をつっぱねた10日後、執行委員長から電話がありました。これ以上は、長引かせたくないので、最初に、社長と専務が支払うといった、50万円だけは支払ってくれないか、という、懇願にも近い口調のものでした。

裁判での争いになれば、弁護士費用、時間、手間がさらにかかりますから、社長と専務は、これで決着することに同意され、短期間で和解することができました。

会社は、後ろ向きの紛争から解放されて、再建に向けて努力されています。

相談を希望される皆様へ

労働事件において、会社側は、最初からハンディを負っています。
法律が、労働基準監督署が、ユニオンが、労働者の味方をしている中で、単独で戦うことは決してお勧めできません。そして、社労士の先生は、平時の相談相手ではあっても、紛争になった場合の相談相手ではありません。
機を逸せず、お気軽にご相談をお申し込み下さい。
セカンド・オピニオンを求めるご相談も歓迎します。

ご相談に先立っては、以下をご準備ください。

労働者本人に関するもの 履歴書 契約書 人事評価書など
会社に関するもの 会社案内 就業規則 給与規程
事実に関するもの 関係図 時系列表 それを裏付ける資料

わからなければ、ご自身の判断で取捨選択せず、あるだけのものをご持参ください。

 

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