第一中央法律事務所

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倒産と事業再生

プロローグ

私が中学3年生の夏のことだったと思います。
我が家は、小さな土建業を営んでいたのですが、学校から帰宅すると、経理担当の母が事務員さんと手を取り合って泣いていました。

「どうしたの?!」

母が、どうにか説明してくれたのは、父が信用して1000万円近くの仕事をした先が支払いをせず、うちは倒産を免れない、とのことでした。
その取引先の社長は、かつて不祥事を起こしたことがあり、父は「再起を図りたい」という言葉を信じて支援したのですが、最初から騙されていたのだ、とも言っていました。

その時、妙に冷静な気持ちで思ったのは、 自分は高校へ行けるのだろうか、 自宅なども取られてしまうのだろうか、 でも、家族みんなで一生懸命やれば、生きて行くことはできるのではないか。

そんなことでした。

中学生で、細かいことはわかりませんでしたが、自分が弁護士という仕事について、過去を振り返ると、いつもその日の情景と気持ちが蘇ってくるのです。

経営が苦しくなると誰もが思うこと

経営が苦しくなると、経営者は悪夢に苛まれます。

自宅を取られて、路頭に迷うのではないか。
現金を失い、衣食が足りなくなるのではないか。

将来の収入を失うのではないか。
家族と団らんを過ごせなくなるのではないか。
債権者が押しかけてきて騒動になるのではないか。
家族や親戚縁者の財産まで取られてしまうのではないか。 

そうした思いが頭の片隅からはなれず、眠れない夜を過ごすことになります。
人によっては、酒や刹那的な快楽に身を委ねて心配を忘れようとし、それが過ぎて、体と心が蝕まれることも少なくありません。
本当は、経営の建て直しにエネルギーと時間を注がなければならないのに、そちらが疎かになってしまいます。経営建て直しのための分析と抜本的な対策を立て、実行するべきとわかっているのに、日々の業務に追われ、その抜本的な対策とは何かについて、学び、考える時間が取れないまま、時間が流れていきます。

事業再生や倒産に関する私の考え

このサイトを読んで下さっている方は、どなたも真面目に仕事に取り組んで来た方々だと思います。自らの仕事を通じて、自分と従業員、そしてその生活を支え、社会に少しでも貢献できるように、額に汗して、あるいは一生懸命に考えて、事業を営んで来られたものと思います。
しかし、事業は順風満帆とはいえない状態に陥ってしまった。
そんな時、自分を、そして従業員を責めたりしがちですが、それは何のプラスにもなりません。
パナソニック、ソニー、シャープ、東芝、日本の経済を支え世界を席巻した優良企業が、あっという間に苦境に陥ったことは記憶に新しいところです。外部環境の目まぐるしい変化。あなたの事業が苦しい原因が、それだけにあるとはいいませんが、他方で、経営者の無能だけが理由でもありません。

どんな困難でも、絶対に乗り越えられるとはいいません。
しかし、智恵と工夫で、乗り越えられることもあります。
そのためにできるだけのことはしてみませんか。
それでも、刀折れ矢尽き、撤退=倒産を余儀なくされるかも知れません。 

でも、倒産にも、よい倒産と悪い倒産があります。
これまで貢献してくれた従業員や取引先には、そして家族には、法律の許す限りでできるだけのことをしてあげたいものです。ところが、ものごとの優先順位をまちがえて、従業員や家族、そして友人まで、犠牲にしてしまう経営者がいかに多いことか。
経営者としてのあなたが倒産、という形で挫折しても、上司として、家族として、友人の輪をつなぐ者として、ふたたび平穏な生活を取り戻すことは、決して不可能ではないのです。

勝敗を分けるポイント

第1に、早い段階で対策を打つことが重要です。
「あと○か月早く、来て下さったらこういう手が打てたのに。」
「これは、やらない方がよかったですね。」
と伝えなければならないことは、非常にしばしばあります。
そして、それほど残念なことはありません。 

第2に、誰を大切にするかの優先順位をまちがえないことです。
しばしば、税務署や金融機関を優先して、仕入れ先や従業員、あるいは家族、親類縁者をも巻き込むような迷惑をかけてしまい、本業に支障がでて、さらには精神的にも支えになってもらわなければならない人たちの信頼を失ってしまうことがあります。

第3に、経営をめぐる数字と起きうる事態を、すべて可視化(見える化)し、先手を打っていくことです。
例えば、かなりの規模の会社でも、日次の資金繰りが見える化されていないケースが大半です。不安の多くは、いつ何が起きるかがわからないことによるものです。最悪でも、こういうことしか起きない、無為に過ごしたときに何が起きるかが見えてくれば、気持ちを落ち着けてひとつずつ対策を打ってゆくことが可能です。
しかし、通常の経営者は、そうした知識や経験がなく、あるいは、現実に対応できるまでの作業をする時間が取れません。そこで、専門家のサポートを受けることが極めて重要になります。

倒産と事業再生に関する事例

1.税務署を味方につけて倒産の危機を回避したケース 

システム・キッチンの販売代理店をしていた会社のことです。
本社社屋のあった地域が、ある新興不動産会社の開発計画にかかり、会社のある土地・建物を購入したいという申出を受けました。ひらたくいえば「地上げ」の対象になったのです。
不動産会社が呈示してきた条件は、代金5億円。その5億円で、近隣に用意された別社屋を2億円で買い、譲渡益にかかる税金の支払いに2億円、1億円が手もとに残る、というものでした。
翌年から税率もあがるから、と急かされて、契約書にサインしました。代金は年内に2億円支払われ、その資金で新社屋を購入して移動し、元の社屋を明け渡す際に残金を支払う、という契約になっていました。

ところが・・・

2億円を受け取って、新社屋へ引っ越してすぐ、問題の不動産会社の経営状態が悪化し、残金が支払われなくなってしまったのでした。
このような場合でも税金は発生します。2億円の税金が支払期限までに払えない。これに対し14.6%の延滞税がかかります。年額で2920万円。
問題の不動産会社に訴訟を起こし、差押えまでしましたが、預金口座はほとんど空っぽで、回収することができません。
会社は、たちまち倒産の危機に陥りました。 

本業は利益がでていましたので、問題はこの2億円の税金の滞納だけでした。

よく、税務署は待ってくれない。銀行の意向には逆らえない、などいわれる経営者がおられます。しかし、決してそんなことはありません。
税務署の担当者のところへ何度も足を運び、決して悪質な事情による滞納ではないことを説明し、訴訟の進行状況なども逐一報告し、信頼関係を築くことに心がけました。

最終的には、次のような方法で解決することができました。 

まず、5億円の売買契約を解除しました。
これで、売買はさかのぼって「なかった」ことになりますので、課税もなくなりました。。
しかし、すでに受け取った2億円は返さなければなりません。そのお金は新社屋を買うために使ってしまっています。そこで、2億円を返す代わりに、新社屋そのものを返す合意をしました。ここでも、別途の課税が生じないように税務署と相談しながら、細心の注意を払って進めました。
これによって、会社は旧社屋に戻り、元どおりの営業を続けることができるようになりました。

結果だけ書けば、簡単なようですが、一度移転した社屋を再度、元の場所に戻すのには、依頼者はなかなか納得されず、説得に大変な苦労がありました。
一時期は、依頼者のご不満が原因で、解任されそうにもなり、こちらからも辞任しようかと悩んだこともありました。
終了時に、税務署の担当者の方が
「先生、よくここまで考えて、実行されました。久々にサムライを見ましたよ。」
といってくださったことで、すべてが報われた気がしました。

依頼者も、その後、健全な事業者による再開発が行われる際に引退し、現在は悠々自適の生活を送っておられます。

2.裁判所の民事再生手続きを利用したケース 

J社は、東京のベッドタウンを走る私鉄沿線で、戸建て・マンション開発をしていました。
銀行借入をして、積極的に用地を取得し、優良な物件を次々に建てることで、沿線のブランド力を高め、地域の不動産の資産価値が上がり、金融機関からの評価も高まるというよい循環の中で事業を拡大してきました。
ところが、自社が中心となって開発をすすめ地域の人気が高まったことで、沿線の地価があがり、土地の仕入が高コストになってしまいました。

私は、J社の顧問弁護士として、時折会議にオブザーバーとして参加しておりました。
当時は、まだ社長とも親しくはなく、先生、お客様として奉られているような状態で、なんとも居心地のわるい思いをしておりました。
しかし、会議に参加するごとに、仕入担当者の報告を聞き、社長の様子を見ていると、大きな異変が迫っているように感じ、あるとき、意を決して、社長にメールをだしました。 

「幹部社員にもいえないような、お悩みを抱えておられませんか。
どれだけの力になれるかはわかりませんが、お話しを聞くだけでも気持ちが楽になるかもしれませんので、必要なら遠慮なくおっしゃってください。」と。

静かな居酒屋の個室でお話しを聞くと、銀行から新規融資を断られ、他方で売り出した物件の売れ行きが不振で、近々、資金繰りが破綻するかもしれない、とのことでした。 

早速、私たちの事務所から派遣したチームと、社長とその側近だけで、数名だけのプロジェクトチームをつくり、分析を始めました。もちろん、倒産の危機などちとういことは極秘、前向きのM&Aなどのコンサルティングをしている形をとりました。 

結果として、裁判所を用いた民事再生手続きが最適であるとの結論に至りました。 

民事再生手続きの申し立てには、以下のメリットがあります。

半年間は、銀行借入れを含め、債務の弁済をしなくてもよい。
・    手形を振り出していても不渡処分は免れる。
・    事業は従来どおり続けてよい。
・    負債の返済をせずに入金はあるのでキャッシュが積み上がる(積み上がらないようなら再生できない企業ということ)
・    半年後に、再生計画案をだす。これは、破産配当よりも多ければ大幅なカットを求めることができる。
・    再生計画は、債権者数と債権者の頭数の過半数の賛成で可決される。

社長のメンタルの健康管理もふくめ、テレビドラマにしたいほど、さまざまなエピソードがありましたが、J社は在庫を売り尽くし、銀行には80%近い弁済をすることができました。

新規の融資を受けられないので業態を仲介業務に特化し、現在は、不動産仲介業の新たなビジネスモデルを展開して注目を集めています。 

3.破産しても、父を自宅で見送れたケース

Fさんは、アクセサリーの輸入・販売業を営んでいました。
自社ブランドを立ち上げて、父上が建てた都内の一等地の自宅兼賃貸場マンションを担保に銀行借入れをし、事業展開を試みました。
最初こそ順調でしたが、3年目に、大きな取引先が倒産し、多額の不良債権を抱えることになり、資金繰りに窮することになりました。
知人の紹介で、当事務所を訪れたFさんと何度も協議しました。

Fさんの決断は潔いものでした。
会社は潰れてもいい。ただし、今後も、アクセサリーの輸入・販売業の業界で生きていくために、海外の仕入れ先にだけは迷惑をかけたくない。
不動産も手放しても仕方がない。ただ、そこに老齢の父親に、どこか他所に引っ越させることはしのびない。そこで生涯を終わらせてやりたい。

そこで、別途新会社を設立して、事業をそちらに移管し、仕入れ先には迷惑をかけずに、取引を継続できる形をつくりました。

父親の自宅兼賃貸マンションについては、買い手を探す際に、父親をそのまま賃借人として住まわせてくれる買主を粘り強く探し、売買をすることができました。
お陰で、父親の生活状況はまったく変わらずに、晩年を過ごしてもらうことができました。

ご相談の前にしていただきたいこと

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。

次に、必要なのは「行動」です。
まずは、次のような項目をまとめてみてください。
日々の仕事の傍ら、大変かとは思いますが、自分でこれを確認することは必要な作業です。
でも、時間切れになりそうなら先に、当事務所にご連絡ください。
これらの資料作成自体からサポートいたします。

Ⅰ 事業内容について
 ・ 業界 業種 商流 競合他社 許認可 特別な事情
 ・ 売上高 直近3年間
 ・ 事業所 本店 支店 所在地と規模
 ・ 組織体制 株主 役員 従業員数 その内訳 労働組合
 ・ 苦しくなった原因

Ⅱ 負債の内容と関係・連帯保証人の有無
 ・ 税金・社会保険料
 ・ 従業員(未払給与 解雇予告手当 退職金)
 ・ 取引先
 ・ 銀行・信用金庫
 ・ ノンバンク
 ・ 高利金融業者
 ・ 親戚・知人・友人
 ・ その他 

Ⅲ 資産の内容
 ・ 不動産等 担保の状況
 ・ 売掛金
 ・ その他

Ⅳ 資金ショートの予想時期
 ・資金繰表(日繰り)の有無
 ・手形・小切手振出と不渡りの危険
 ・手続き費用の捻出の可能性

Ⅴ 代表者・連帯保証人として生活の確保など心配な点

Ⅵ その他、なんでも気になること

 

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